その2 お茶はがんに効く?
2-1 抗がん作用
今から25年ほど前に、静岡県のお茶どころ中川根町(当時)では胃がんによる年齢調整した死亡比が低く、全国平均100に対し、男性では20.8、女性では29.2という驚くべき結果が発表されました。
この結果をお茶と関係づけた研究をきっかけに、一躍お茶の抗がん作用の研究が進みました。多くのマウスやラットを使った実験では、発がん剤を投与した動物にお茶を
飲ませると、発がん率が減少すること、がん細胞を移植した場合もがんの増殖や転移が抑制されることが示されています。
お茶には様々な成分が入っていて健康維持に役立ついろいろな作用がありますが、抗がん作用の主な担い手は、緑茶ポリフェノールであるカテキンの中のエピガロカテキンガレート(EGCG)です。
(中略)
緑茶やカテキンが人に対しても抗がん作用があるかどうかはまだ確定していませんが、最近の疫学調査研究で、お茶を飲む人は胃がん、前立腺がん、肝がん、卵巣がん、子宮内膜がんなどになる危険性が低かったという報告があり、臨床介入試験で緑茶カテキンが前立腺がん予防に効果があったという論文もあります。
これらのことは今後の臨床試験などで確かめていく必要があります。最近、緑茶カテキンを軟膏とした製剤が良性扁平上皮腫瘍の一種である陰部にできるイボの治療剤としてアメリカFDAの認可を受け、現在、いくつかの臨床試験により治療効果があることが認められています。
2-2 発がん促進の抑制
お茶のがん予防に関する研究が本格化したのは1980年代からで、試験管内の実験から始まり、動物や人を対象とした研究へと進んできました。
動物実験までの段階では、圧倒的に多くの事例でお茶は発がん抑制に有効であることが示されています。
(中略)
このように、お茶は発がん促進過程を抑制することによっても抗がん作用を発揮しますが、活性成分はカテキンだけではないので、生活の様々な場面に合わせて好みのお茶を選び、保健効果を期待しつつ、楽しく飲むのがよいでしょう。